チームみらい11議席が示した新しい選挙のかたち
2月8日に投開票された衆議院議員総選挙で、チームみらいが大きく躍進した。
比例代表で約381万票を獲得し、11議席を獲得した。2025年の参議院選挙で国政政党となってから、わずか半年ほどでのことである。今回の結果を、単に「若者に人気の新党が伸びた」と片付けてしまうのは簡単だ。しかし、チームみらいの躍進には、これからの選挙を考えるうえで重要なヒントがいくつも含まれているように思う。
これまでの日本の選挙、とりわけ国政選挙では、後援会、業界団体、地方議員、労働組合など、いわゆる「組織」の存在が大きな力を持ってきた。もちろん、今でも組織の力は強い。しかし、チームみらいは既存政党のような長年の後援会や固定票を持たない状態からスタートし、それでも今回、比例で約381万票を集め、11人を国会に送り込んだ。
これは非常に大きな意味を持つ。
SNSや動画、オンラインコミュニティによって、これまでなら街頭演説や後援会活動でしか接点を持てなかった有権者と、日常的につながることができるようになった。言い換えれば、ネット上に巨大な「デジタル後援会」をつくることが可能になったのである。ただし、今回のチームみらいの強さを「選挙期間中にSNSを頑張ったから」と理解するのは正確ではない。安野貴博代表をはじめ、チームみらいは日頃から政策や活動内容をネット上で発信し、有権者との接点を積み重ねてきた。
特徴的なのは、一方的に情報を発信するだけではなく、有権者が政策形成に参加できる仕組みをつくってきたことである。政策について質問できる仕組みを用意し、寄せられた意見や改善提案を政策に反映していく。従来の政治家の発信が「自分が何をしたかを伝えるもの」だとすれば、チームみらいはその先にある双方向のコミュニケーションを実践してきた。また、チームみらいが有権者に提示したのは、個別の政策だけではなかった。「テクノロジーで行政や政治そのものを変える」という、政治のやり方そのものについての提案だった。
多くの政党が、給付、無償化、減税など具体的な政策を競うなかで、チームみらいは「政治そのものをどうアップデートするか」という物語を提示した。今回、有権者に選ばれたのは個別の政策だけではなく、「この人たちなら今までとは違う政治をやってくれるかもしれない」という期待も大きかったのではないだろうか。これまで新人候補にとって最大の壁の一つは知名度だった。ポスターを貼る。駅に立つ。地域を歩く。集会を開く。こうした活動を繰り返しながら、少しずつ名前と顔を覚えてもらうのが選挙の基本だった。もちろん、それはこれからも重要である。
一方で、スマートフォンを通じて毎日何万人、何十万人という人に情報を届けられる時代になった。一人ひとりの有権者との接点をネット上で積み上げ、その人たちがさらに情報を拡散していく。この構造をつくることができれば、これまでとは比較にならない速度で認知を広げることができる。
今回のチームみらいの躍進は、選挙における「地盤」の意味そのものが変わりつつあることも示している。地盤とは、必ずしも地域の後援会名簿だけではない。SNSのフォロワーも、動画の視聴者も、オンラインコミュニティの参加者も、日頃から政治家の発信を見ている人たちも、新しい時代の「地盤」になり得る。
ただ、ここで重要なのは、ネットだけやれば選挙に勝てるということではない。むしろ、従来の「どぶ板選挙」の考え方をネットの世界にも持ち込むことが必要なのだと思う。毎日のように発信し、寄せられた反応に向き合い、質問に答え、活動の裏側を見せ、政策を分かりやすく説明する。そして、その積み重ねによって支持者との関係を少しずつ深めていく。私は、こうした活動を「ネットどぶ板」と呼んでいる。選挙の直前になって広告を出したり、SNSの投稿回数を増やしたりするだけでは十分ではない。リアルのどぶ板と同じように、ネット上でも日常活動の積み重ねが最後に票となって返ってくる。
政治の世界では、成功した選挙を見ても「特殊な事例だった」と処理されることが少なくない。しかし、時代の変化を特殊事例として片付けている間にも、有権者の情報収集の方法は確実に変わり続けている。テレビよりもスマートフォンから情報を得る時間の方が長い人は、もはや珍しくない。政治家を知るきっかけも、駅前の演説や選挙公報だけではなく、YouTube、TikTok、X、Instagramなどへと広がっている。
今回のチームみらいの躍進を見て、既存政党や現職政治家が考えるべきことは、「どうやってチームみらいに対抗するか」ではない。有権者との接点のつくり方そのものが変わったという現実に、どう適応するかである。従来型の組織、地上戦、街頭活動はこれからも重要だ。しかし、それだけでは十分ではない。リアルのどぶ板に加えて、ネット上でも日常的に有権者との接点を積み上げていく必要がある。
リアルのどぶ板と、ネットのどぶ板。この二つを当たり前に組み合わせる政治家が、これからの選挙では強くなっていく。2026年衆院選におけるチームみらいの11議席は、単なる新党の躍進ではない。日本の選挙が、新しい時代に入ったことを示す象徴的な結果だったのかもしれない。
高野 祐大





